generated from huidetang/XiandaiFenshuTemplate
-
Notifications
You must be signed in to change notification settings - Fork 0
Commit
This commit does not belong to any branch on this repository, and may belong to a fork outside of the repository.
- Loading branch information
1 parent
2d79f00
commit ad6cf92
Showing
2 changed files
with
79 additions
and
1 deletion.
There are no files selected for viewing
This file contains bidirectional Unicode text that may be interpreted or compiled differently than what appears below. To review, open the file in an editor that reveals hidden Unicode characters.
Learn more about bidirectional Unicode characters
This file contains bidirectional Unicode text that may be interpreted or compiled differently than what appears below. To review, open the file in an editor that reveals hidden Unicode characters.
Learn more about bidirectional Unicode characters
Original file line number | Diff line number | Diff line change |
---|---|---|
@@ -0,0 +1,78 @@ | ||
|
||
= ぶいけっとりある三題噺 | ||
|
||
== はじめに | ||
|
||
この二編の小説は二〇二三年冬のバーチャルマーケットリアル2023Winterで書かれたものです。 | ||
|
||
== 遅れてきたクリスマス | ||
|
||
訪れないと思っていた幸せが訪れる物語。 | ||
|
||
=== 第一の作品のお題 | ||
|
||
* ひとりぼっちのクリスマス(@KGHT_2 さん) | ||
* 食事(@E_M_mcpe さん) | ||
* 遅刻(@zumiandzumi さん) | ||
|
||
=== 第一の作品の本文 | ||
|
||
私のスマホが鳴る。 | ||
|
||
彼からの、電話。彼のお仕事は、今忙しいって。今日も、残業だって……。 | ||
|
||
今日は、クリスマスなのに。しかも、一緒に食事って、レストランを予約していたのに……。だけど、残業が終わる時間は読めないって……。 | ||
|
||
予約の時間まで、あと30分しかない。このままだと、遅刻してしまう……。 | ||
|
||
「ごめんなさい、ちょっと予約の時間に遅れそうで……」 | ||
|
||
お店に、電話を入れる。このままだと、クリスマスに、ひとりぼっち……。予約の時間には、間に合いそうもない……。でも、彼は、多分来られない……。私、どうしたらいいんだろう……? | ||
|
||
気分は、暗くなる。せっかくの、クリスマス。彼のいない、クリスマス。ただ、そのことが、悲しかった。ここがいいなって、彼と一緒に選んだお店だったのに。予約もなかなか取れない、評判のお店だったのに……。私より、仕事が大事なの? | ||
|
||
そんな時に、またスマホが鳴る。彼からの、電話だ。予想以上に仕事が早く片付いて、もう、すぐそばに……。 | ||
|
||
「待たせたね、萌……、これは、僕からの、プレゼント!」 | ||
|
||
蓋を開けると、ダイヤモンドの指輪だ……。これって、まさか……。 | ||
|
||
「萌さん、僕と結婚してください!」 | ||
|
||
あまりのうれしさに、涙がこぼれ出る。教会の鐘が、高らかに鳴り響く。私は無言で、頷いていた。彼に抱きしめられると、そのぬくもりは、あまりにも温かくて……。 | ||
|
||
突然の、プロポーズ。幸せが、遅刻して、やってきた。それだけで、私は嬉しかった。 | ||
|
||
== 心地よい眠りを | ||
|
||
もう一つの世界で、眠ろうか……。 | ||
|
||
=== 第二の作品のお題 | ||
|
||
* 夜景(@Mu_Alexius000 さん) | ||
* 剣(@shake_ba2 さん) | ||
* V睡(@citron3169 さん) | ||
|
||
=== 第二の作品の本文 | ||
|
||
窓の外に、広がる夜景。 | ||
|
||
光り輝く街の灯りが、剣のように天に突き刺さっている。 | ||
|
||
こんなにきれいな空なのに、なぜかこの景色を見ても落ち着かない。私は、自然の中で眠りたいのだ。 | ||
|
||
そんな世界に背中を向けて、私はヘッドマウントディスプレイを被る。電源を入れると、周りの視界は瞬く間に変わっていく。 | ||
|
||
私が立っているのは、森の中の小さな家。自然溢れる安らぎの世界は、いつものタワーマンションとは全く違う。鳥のささやきに、川のせせらぎ。全てが、心地よい。こんな自然の中で暮らせたらと思うけど、そうはいかない。だから、私はVR機器を被って、大自然の中にダイブする。 | ||
|
||
こんな素敵なところで眠れたら素敵なのだ。鳥の声も水の音も、私にとっては良い子守歌。睡魔に身を委ねて、私は目を閉じる。 | ||
|
||
目覚ましのベルが鳴れば、もう朝だ。朝日輝くこの世界はなんと美しいことか。周りには友人の残した書き置きが。大自然の一軒家にいながら、メタバースで人と繋がれるのだ。 | ||
|
||
でも、名残惜しいけど、「現実」に戻らなければ。 | ||
|
||
おはようのメッセージに背を向け、私は元の世界に歩み始める。また、今夜、戻ってこよう。でも、それまでは日々の勤めをこなさなければ。 | ||
|
||
ヘッドセットを外し窓の外を見ると、無機質な剣が空に突き刺さっている。あの愛おしい世界に、しばしの別れを。夜が来たら、あの世界に行ける。それまでは……ほんのちょっとの我慢だ。 | ||
|
||
……夜が、待ち遠しい。 |